加藤俊徳著=
医学博士 加藤俊徳著=
脳の強化書 (1)
筋肉を鍛えるのと同じように、脳トレすることはできるのだろうか・・・・。MRIとは、「磁場」を利用して人体の内部を撮影する技術のこと。
巨大な筒状の装置に人が横たわり、機械を移動させながら撮影が行われる光景を見たことがある人もいるでしょう。
私はこの技術をもとに1万人近い人たちの脳画像を分析しました。そして、その結果、脳に関する“ある事実を”がわかったのです その事実とは、「チャンスを与えれば、脳はいつまでも成長し続ける」ということでした。
一般的に、身体の機能は10代から20代にかけて発達し、30〜40代から緩やかに衰えていくと考えられています。そして、脳も同じような成長の軌跡をたどるとおもわれています。しかし、これは必ずしも正しくありません。
実は人の脳には未開発の部分がたくさん残っていて、そうしたエリアでは成長前の多数の脳細胞が情報や経験を吸収しようと待機しています。この成長前の脳細胞に適切な刺激を適切なタイミングで与えれば、脳はみるみる新しい姿に変わっていくのです。
眠っている脳番地を刺激するうえで大切なのは、「脳のコンプレックス」を解くことです。
脳のコンプレックスとは、普段の生活の中で苦手意識を持っている能力のこと。たとえば、「言いたいことをうまく伝えられない」「よく道に迷う」「人の名前をすぐ忘れる」「リズム感がない」などが、これにあたります。
思考系脳は、左脳、右脳それぞれの前頭葉の部分に位置します。
前頭葉とは、大脳の中心よりやや前方にあり、思考や意欲、創造力など高度な機能をつかさどる部位のこと。ですから、思考系脳番地は、「こうなりたい」と強く望んだり、集中力を強くしたりする
脳の奥深くには、感情を左右する扁桃体という部位がありますが、この扁桃体は、感情系脳番地の中心的な部位です。
職場でいつも顔を合わせている人を見て、「今日はいつもと違う」と感じることはありませんか。
「髪型が変わった」「ネクタイが派手だ」と明らかに原因が判るときもあれば、「何かが違う…・」というような、漠然とした「?」が生まれるときもあります。
伝達とは、言葉による伝達だけを意味するものではありません。
紙に文字を書く、手を使ってジェスチャーをするなど、誰かに何かを伝えたいときに用いられる、あらゆる行為が伝達系脳番地の守備範囲です。
人は目や耳を通じて情報を得ますが、その情報を理解するときに働くのが理解系脳番地です。
日常生活では、相手の話を文字通り理解するだけでなく、「きっと、相手はこんなことを言いたかったのだろう」と推測で理解することがありますが、このような場合も理解系脳番地が働いています。
運動系脳番地の最大の特徴は、あらゆる脳番地の中で、最も早く成長を始めることでしょう。
人の成長過程では、まず運動系脳番地の枝ぶりが発達し、続いて前頭葉付近の思考系・感情系脳番地、次に脳の後方にある視覚系・記憶系の脳番地が伸びてきます。
成長のきっかけは生まれてすぐの本能的欲求
聴覚系脳番地も、他と同様、おもに言語の聞き取りに使われ番地(左脳側)と、周囲の音に注意
視覚系脳番地は後頭部にあり、両目のすぐ後方から伸びる視神経によって繋がれています。ベッドで仰向けに寝たとき、枕と接する部分に位置するのが視覚系脳番地だと考えるとわかりやすいでしょう。
「記憶系脳番地を伸ばす秘訣は知識・感情との連動」
脳の中心部には、記憶の蓄積に深く関係する「海馬」という器官があり、この器官は左脳と右脳、それぞれに存在しています。この海馬の周囲に位置するのが記憶系脳番地。左脳側は言語の記憶、右脳側は映像など非言語の記憶をつかさどっています。